2021 年 110 巻 3 号 p. 636-642
高齢化に伴い,認知症の増加が加速し,2050年までには全世界の患者数が1億人を超えると試算されている.認知症は,進行すると長期の要介護状態となり,社会・経済・保健医療等さまざまな面での負担が増加する.世界の患者の半数以上は開発途上国に集中しており,認知症による社会負担を軽減することが喫緊の課題となっている.認知症の根本的治療法は未だ確立されていないが,一方で,早期から予防的介入を行うことの重要性を示す医学的エビデンスが蓄積している.重要なのは早期診断であるが,問診形式の認知機能検査や脳画像検査等従来の評価法では,効率的な認知症スクリーニングは難しい.近年,生体液バイオマーカー測定技術の進歩や生体情報と人工知能を利用した診断法の登場により,全く新しい形の認知症診断が可能になりつつある.本稿では,認知症早期診断をより簡便且つ正確にする次世代型診断システムについて,著者らの研究開発も踏まえて概説する.