2021 年 110 巻 5 号 p. 928-934
一過性の急性虚血,血流低下による急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は,腎機能が回復した後,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に移行しやすいことがさまざまな疫学研究で知られてきた.その分子メカニズムとして,尿細管間質に慢性的な炎症が持続すること,一過性の虚血障害によって受けた細胞内の変化が記憶され(hypoxic memory),ヒストン修飾やクロマチン立体構造等エピゲノムが変化すること,ミトコンドリアの機能不全,細胞のストレス応答不足等が考えられている.AKIによる障害のメカニズムを明らかにすることは,CKDの発症を抑制する新しい治療法につながる可能性がある.