日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
上気道・下気道アレルギーの連関―One airway one diseaseの新しい考え方―
谷口 正実
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2022 年 111 巻 8 号 p. 1609-1619

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抄録

One airway one disease(OAOD)は,上気道と下気道に同時に存在するアレルギー(=好酸球)性炎症病態を指すが,類似疾患である副鼻腔気管支症候群は,好中球性炎症が主体であり,その概念には通常含まれない.OAODは2病型に分かれ,小児から若年成人に発症しダニやペットが原因となる「アレルギー性鼻炎+アトピー型喘息」と,成人以降に発症し機序が不明の「鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎+非アトピー型喘息」がある.両者ともに喘息を合併し,基本的に上下気道の症状は連関(同時期に悪化)しやすいが,近年の吸入ステロイド薬の影響により,上気道のみ悪化する例が増加している.2つのOAODにおいて,上気道炎症(鼻炎/副鼻腔炎)を治療すると喘息症状が改善することが証明されており,ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)が共通薬として有効である.それぞれに特有の治療法として,アトピー型OAODでは,環境対策やアレルゲン免疫療法があり,非アトピー型OAODの重症例では,内視鏡下副鼻腔手術や生物学的製剤,特にデュピルマブ(抗IL-4/13受容体抗体)が適応となる.非アトピー型OAODの約50%はNSAIDs過敏を合併し,過敏歴のない潜在例も存在するため,NSAIDs処方の際は十分注意する.

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