日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
エイズ治療の最前線
岡 慎一
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2006 年 95 巻 10 号 p. 2112-2117

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抄録

HIV/AIDSに対する治療は, 1996年までは単剤もしくは2剤による治療で, 長期的な延命効果は得られなかった. しかし, 97年以降可能となった3剤以上の多剤併用療法 (HAART) によりHIV患者の予後は, 飛躍的に改善した. この経過は, まさに結核治療の歴史と同じである. しかし, 結核との大きな違いは, HIV感染症は治癒しないことである. したがって, 基本的には, 生涯にわたる治療を必要とする. HAARTに用いられる薬剤は, 年々改善され, 現在は, 1日1回4錠による治療が可能となっている. これらの組み合わせは, 大規模無作為割付試験の結果により決められ治療ガイドラインに盛り込まれている. しかし, このガイドラインは年ごとに改訂が行われており, HIV/AIDSの治療法は, いまだ途上にあるといってもよい. その大きな理由の一つは, 治療が長期にわたることであり, 薬剤耐性ウイルスの出現, 治療薬の慢性毒性, さらには, 確実に長期にわたり服薬しなければならないという精神的プレッシャーなどの問題である.

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© 2006 一般社団法人 日本内科学会
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