抄録
2004年9月より, 秋田県から新潟県にかけての日本海沿岸を中心に急性脳症事例が多発し死亡例も発生している. 多くの症例の特徴として, 腎機能障害, スギヒラタケの摂食があげられているが, 原因は不明である. しかし, 診療, 予防上の必要性, 次年度以降の予防対策, 社会的影響を鑑みると, 原因の早急の究明は喫緊の課題である. 厚生労働省は平成16年11月に, この急性脳症対策の方向性を示す目的で特別研究事業として, 「東北北陸等での急性脳症多発事例にかかる研究班 (主任研究者 : 埼玉県立大学学長 柳川 洋)」を立ち上げて, これまでに行政, 専門家が把握している情報を共有し, これらの情報を基にした検討会を開催した. その結果, 疾病概念, 原因, スギヒラタケの毒性についての問題を整理することができた. 本稿では, 患者発生の実態を中心にして, 検討会で得られた情報を要約した.