2007 年 96 巻 12 号 p. 2703-2707
新医師臨床研修制度は研修医だけではなく,指導医側にも大きな変革をもたらした.研修医にとっては研修先が多岐にわたることを意識させることとなり,ややもすれば受動的な傾向の強い医学生に,医師としての人生に対して能動的に取り組む姿勢を持たせることとなった.当初,指導医層には新医師臨床研修制度導入により,教育という業務の増大を懸念する声もあったが,屋根瓦方式により,外来や手術といった本来の業務に以前にも増して専念できる結果となった.また,研修医への指導が自らへのインセンティブとなり,新たな気持ちでの学習の機会を持つこととなった.新医師臨床研修制度により,卒後初期研修の大枠は決定されたが,その細則や指導法には不明な点も少なくない.その点に関して,"独り立ちのできる臨床医の育成"を目標とした"Hands-on"方式による実践的研修と,"屋根瓦方式"による研修医チームの編成が大きな成功の鍵を握っている.初期研修において大切なことは,個々の疾患の勉強ではなく,自らに適した勉強法を身につけることであり,また,どんな困難にも自信を持って挑戦できるような"強い精神力"とそれを支える"平静の心"の基礎を築く点にある.この両者にさらに英語力が加われば,"世界に通用する本物のプロ"への道は自然に拓けてくるはずである.