日本内科学会雑誌
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II.発生機序と診断
1.薬剤性肺障害の発生機序
吉澤 靖之倉持 仁仁多 寅彦岸 雅人見高 恵子玉岡 明洋古家 正宮崎 泰成大谷 義夫稲瀬 直彦
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2007 年 96 巻 6 号 p. 1091-1096

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抄録

薬物有害反応(adverse drug reaction,ADR)は,薬理作用から予測可能なタイプA反応と,予測不能のタイプB反応(idiosyncratic反応,特異体質反応)に分類され,後者に薬剤に対するアレルギー反応が含まれる.薬剤そのものがハプテンとしてキャリア蛋白と直接結合して抗原として作用する機序以外に,代謝産物がキャリア蛋白と結合して抗原として作用する,さらには毒性代謝産物が細胞死などを引き起こした(danger signal)結果生じる細胞由来の蛋白などと結合して免疫反応を起こし組織傷害をきたす,あるいは細胞死によるシグナルが抗原呈示細胞の活性化をきたす結果T細胞活性化を引き起こして組織傷害をきたすdanger仮説がある.一方,肺毛細血管内皮細胞および肺胞上皮細胞に直接傷害をおよぼし,肺血管透過性亢進,間質の浮腫,線維化をきたすメカニズムとして,活性酸素系,薬剤や代謝産物のリンパ球やマクロファージを介する直接傷害(細胞障害性Tリンパ球,好中球活性化,サイトカインによる各種細胞傷害)が考えられている.最近はTリンパ球の薬剤認識の機構が解明されてきており,薬剤認識後の免疫反応の病態解明も進展すると考えられる.また,細胞障害性Tリンパ球はperforinやgranzyme Bを介して組織障害をきたすと考えられている.

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© 2007 一般社団法人 日本内科学会
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