2008 年 97 巻 7 号 p. 1531-1536
特定のウイルスや細菌が発症や進展に関与している悪性リンパ腫があり,その分子機構の解析が進んでいる.EBウイルスは,Burkittリンパ腫,Hodgkinリンパ腫,鼻腔NK/T細胞リンパ腫,膿胸関連リンパ腫,日和見リンパ腫などさまざまな疾患と関連があるが,ウイルス関連タンパク質の発現パターンがそれぞれ異なっている.成人T細胞白血病・リンパ腫はHTLV-1感染によって発症する疾患であり,Taxに加えてHBZが発症機構に重要であることが最近注目されている.Helicobactor pyloriは,胃のMALTリンパ腫と関連があり,API2-MALT1キメラ遺伝子が認められない症例では除菌のみによって腫瘍の消失が期待できる.HHV-8(KSHV)感染によって,primary effusion lymphomaと呼ばれる特異なリンパ腫がHIV感染者を中心に発症することも知られている.これらの病原体関連リンパ腫の発症機構解明や治療法選択には,病原因子とともに宿主因子,とりわけ生体の免疫防御機構を十分に理解する必要がある.