2008 年 97 巻 8 号 p. 1844-1850
癌細胞は正常細胞の「癌化」に伴い極めて特異な糖鎖構造を獲得する.こうしたものの多くは既に腫瘍マーカーとして臨床の場に応用されている.さらに,癌細胞では通常見られない糖脂質が大量に産生され,その一部は血中にも出現してくることから糖脂質が癌免疫の標的となり得る.一方,これら糖脂質は神経系組織にも豊富に発現しており,神経組織に交差反応を起こして神経障害が発現してくる場合がある.本稿では現在まで明らかとなった抗糖脂質抗体による傍腫瘍性神経症候群の臨床スペクトラムを検証しその実態を明らかにしたい.