日本内科学会雑誌
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97 巻, 8 号
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傍腫瘍性神経症候群:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.障害部位・病態による臨床病型
  • 川並 透, 加藤 丈夫
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1764-1770
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    中枢神経を障害する傍腫瘍性神経症候群は小脳変性症と脳脊髄炎の頻度が高く,他に辺縁系脳炎,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群,および脳幹脳炎がある.脊髄障害は稀である.神経症状は急性または亜急性に発症・進行し,腫瘍の発見に先行していることが多い.神経症状,背景にある腫瘍,および抗腫瘍神経抗体の三者の組み合わせから傍腫瘍性神経症候群を速やかに診断することが腫瘍の早期発見に重要である.
  • 三井 良之, 楠 進
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1771-1777
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    末梢神経障害を来す傍腫瘍性神経症候群は,臨床病型に基づいて,亜急性感覚性ニューロノパチー,感覚運動性ニューロパチー,自律神経性ニューロパチーに分類され,一部の症例では,抗Hu抗体,抗CV2抗体など自己抗体が証明される.原因腫瘍としては,肺小細胞癌の頻度が高いが,乳癌,前立腺癌,消化器系癌などの報告もある.また,造血器腫瘍に関連したものでは,腫瘍細胞による免疫グロブリンの異常な産生を特徴とするCrow-Fukase症候群,抗MAG抗体や抗SGPG抗体に関連したニューロパチー,抗ガングリオシド抗体に関連したニューロパチーなどがあり,様々な免疫調整療法,抗腫瘍療法が試みられている.
  • 本村 政勝
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1778-1783
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)は,肺小細胞癌(SCLC)を高率に合併する傍腫瘍性神経症候群の代表例である.また,LEMSは神経終末部でのアセチルコリンの放出障害をその病態の基盤とする神経筋接合部・自律神経疾患でもある.その発症機序としては,SCLCに発現しているP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q型VGCC)に対する免疫反応で生じた自己抗体が,神経終末のP/Q型VGCC量を減少させ,LEMS症状を発現させると推察されている.さらには,LEMS患者の一部では,P/Q型VGCC抗体が血液脳関門を通過して,小脳のP/Q型VGCCを標的抗原として運動失調症を引き起こすと考えられている.
  • 熊本 俊秀
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1784-1789
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍関連ミオパチーには皮膚筋炎,多発筋炎,急性壊死性ミオパチー,リウマチ性多発筋痛症,多発カルチノイドミオパチー,悪液質性ミオパチーがある.抗34kDa抗体,抗155/140kDa抗体,抗シグナル認識粒子抗体,抗PM/Scl抗体,抗Jo-1抗体などの特異自己抗体の存在が報告されているが,未だ確立されたものはなく,悪性腫瘍を合併しやすい,腫瘍除去により筋症状が改善することがあるという点を除けば,傍腫瘍性としての病態は不明なことが多い.
  • 大黒 浩, 斉藤 由幸
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1790-1795
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    傍腫瘍性網膜症は腫瘍細胞に本来網膜にのみ存在する網膜特異抗原が異所性発現することにより腫瘍細胞と網膜との間に共通抗原が生じ,自己免疫機序により神経網膜が障害される疾患である.本症では網膜の進行性変性に伴い視感度の低下,視野狭窄などの症状を呈する.癌の原発病巣としては,肺癌,特に小細胞癌が最も多く,次いで消化器系および婦人科系の癌の頻度が高い.診断としては上記の臨床症状に加えて血清中に抗網膜抗体が証明されれば診断が確定的となる.現時点では確立された治療法はないが,分子病態が明らかになってきており,分子病態に基づく新しい治療法の開発が模索されつつある.
  • 斉藤 豊和, 楠 淳一
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1796-1804
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    神経学的傍腫瘍症候群は悪性腫瘍が産生する毒素や免疫学的異常により神経系に生じる合併症である.一般的には末梢神経障害が最も多いが,肺小細胞癌や悪性リンパ腫,小児神経芽腫などでは末梢神経障害のほかにさまざまな神経学的異常を呈してくる.傍腫瘍症候群は悪性腫瘍の病勢や進行度とは無関係で,悪性腫瘍を治療しても症状の改善は期待できないことが多い.時に悪性腫瘍が発見される数ヵ月~数年前より神経症状が出現してくることが稀でなく,悪性腫瘍の診断の手がかりともなり,臨床的に重要である.悪性腫瘍と傍腫瘍症候群の詳細な因果関係はいまだ明らかではないが,近年,さまざまな自己抗体の出現が明らかとなり,傍腫瘍症候群の定義も変化しつつある.今後の症例の蓄積による解析が待たれるところである.
  • 内山 真一郎
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1805-1808
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    トルーソー(Trousseau)症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じる病態である.脳梗塞の成因の多くはDICに併発した非細菌性血栓性心内膜炎による心原性脳塞栓症と考えられ,原因となる悪性腫瘍は固形癌が多く,その中では婦人科的腫瘍が最も多い.皮質に多発する梗塞が多く,血液凝固マーカーの上昇を認め,原疾患の治療と抗凝固療法が必要となる.
II.病態
III.特異的診断法・治療法
  • 河内 泉
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1823-1829
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    腫瘍の遠隔効果で発症する傍腫瘍性神経症候群は,腫瘍と神経系を同時に標的とする「何らかの免疫因子」が病態に関与している可能性が示唆されている.腫瘍の診断から先行して神経症状が出現することが多いため,腫瘍の存在を示唆する重要な警告サインである.迅速,的確に診断を確定し,腫瘍の根治的治療をすることが,神経症状の改善につながる.本稿では,最近,欧州で提唱されている診断ガイドラインを中心に,傍腫瘍性神経症候群の系統的な診断アプローチについて概説する.
  • 野村 恭一
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1830-1837
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    傍腫瘍性神経症候群(PNS)は腫瘍と神経組織とに抗原交差性が成立し,正常の神経細胞に対する自己抗体が産生され,自己免疫機序により神経障害を来す疾患である.PNSの治療として腫瘍自体に対する治療と自己免疫に対する治療が考慮され,副腎皮質ステロイド療法,免疫グロブリン静注療法,血漿交換療法などの免疫療法が試みられている.一般に,免疫療法はPNSの中枢神経症候に対して治療効果は乏しく,神経筋接合部を含めた末梢神経症候に対して有効性を示す.
IV.最近の話題
  • 渡邊 修, 有村 公良
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1838-1843
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    傍腫瘍性神経疾患として,抗電位依存性カリウムチャネル(VGKC)抗体やグルタミン酸をリガンドとするイオンチャネルに対する自己抗体が,辺縁系脳炎の病態に深く関与することが明らかになった.抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎は,約三分の一の症例で胸腺腫や浸潤性胸腺腫を合併する.胸腺腫に対するアプローチと共に,血漿交換やステロイド療法などの免疫療法を併用することで症状の改善が認められる.
  • 武藤 多津郎, 三原 貴照
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1844-1850
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    癌細胞は正常細胞の「癌化」に伴い極めて特異な糖鎖構造を獲得する.こうしたものの多くは既に腫瘍マーカーとして臨床の場に応用されている.さらに,癌細胞では通常見られない糖脂質が大量に産生され,その一部は血中にも出現してくることから糖脂質が癌免疫の標的となり得る.一方,これら糖脂質は神経系組織にも豊富に発現しており,神経組織に交差反応を起こして神経障害が発現してくる場合がある.本稿では現在まで明らかとなった抗糖脂質抗体による傍腫瘍性神経症候群の臨床スペクトラムを検証しその実態を明らかにしたい.
  • 小出 玲爾
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1851-1854
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    近年,卵巣奇形腫に伴った傍腫瘍性脳炎の症例においてNMDA受容体(N-methyl D-aspartate receptor:以下NMDAR)に対する抗体が発見され,新しい傍腫瘍性神経症候群として注目をあつめている.本疾患は悪性のみならず良性の卵巣奇形腫に伴って発症することがある点や、他の傍腫瘍性神経症候群に比べて神経症状の改善が比較的良好である点など、興味深い特徴を有している.本稿は卵巣奇形腫に伴った傍腫瘍性脳炎の臨床的特徴および今後検討すべき点を中心に記載した.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 野村 文夫
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1888-1894
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ポストゲノム時代となり,発現しているすべての蛋白質を網羅的に解析するプロテオーム解析の臨床応用がはじまっている.本稿ではまず,プロテオームの定義,血清プロテオームの特徴,プロテオーム解析の代表的な手法について述べた.その解析には質量分析法と二次元電気泳動法を有効に組み合わせることが不可欠である.筆者らは血清,血漿,尿,脳脊髄液などの体液や腫瘍組織などを対象とした包括的プロテオーム解析による新しい疾患マーカーの探索に取り組んでいる.これまでに得られた知見のうち,消化器・肝胆膵疾患に関連するものとして,1)習慣飲酒により減少する血清マーカーでγ-GTPのノンリスポンダーの検出にも役立つと期待されるペプチド,2)膵癌切除術前後の血清の比較プロテオーム解析により見出され,その予後に関連すると考えられるアポC1,3)食道がん切除組織の癌部・非癌部の蛍光標識二次元ディファレンス電気泳動法解析結果,について述べた.
  • 長谷川 好規
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1895-1899
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    閉塞性細気管支炎は,特発性もしくは様々な原因により末梢気道である細気管支領域の不可逆的閉塞をきたすことにより呼吸不全を呈する疾患である.稀な疾患と考えられていたが,骨髄移植や心肺移植などの移植医療に伴う閉塞性細気管支炎の合併が報告され,新たに注目を集めている.病因は不明であるが,免疫学的気道炎症を背景に,感染性や非感染性の上皮傷害が閉塞性細気管支炎発症に関与すると考えられている.診断は一般に困難であるが,移植患者における早期病変を見つけるためには,肺機能検査が有用と考えられている.確立された治療法はなく,治療の目標は,細気管支での炎症を抑制し安定した状態に保つことである.今後,国内においても移植そのものが増加して行くことが予想されるが,移植に伴う肺合併症としての閉塞性細気管支炎の発症は増加すると考えられる.
  • 伊藤 亮, 中尾 稔, 迫 康仁, 中谷 和宏, 石川 裕司, 柳田 哲矢
    2008 年 97 巻 8 号 p. 1900-1909
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    エキノコックス症,特に国内で北海道の地方病として知られている多包虫症は,主として肝腫大を伴う難治性の慢性疾患として肝細胞癌その他の疾患との鑑別を要する寄生虫疾患である.多包虫症は北半球で流行し,キツネ,イヌから排泄された虫卵をヒトが誤飲したことによって,早くて数年,通常は10~20年後に発症する.近年,本疾患の臨床検査において画像診断,血清診断,遺伝子診断の技術革新が目覚ましい.血清診断法では,エズリン類似蛋白の遺伝子組換え抗原が検討された結果,特別な経験,特別な施設を必要とせずに,1度の簡便な検査で20分以内に判定結果を出すことができる迅速イムノクロマトキットが旭川医科大学とアドテック(株)により共同開発された.腫瘍マーカーが確認されず,画像診断で多包虫症を疑診した場合にはこの血清検査法を積極的に利用すべきである.患者の検出感度と特異性が非常に高いため,汚染地域の住民検診にも応用可能である.
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