2009 年 98 巻 1 号 p. 153-158
大腸癌をめぐる最近の話題の一つは,過形成性ポリープ(あるいは鋸歯状腺腫)から発癌するというserrated pathwayの提唱である.すなわち,これらの病変の分子生物学的な解析が進み,従来発癌しないと考えられてきた過形成性病変の一部,特に右側結腸の大きい過形成性ポリープから発癌しうることが明らかにされつつある.もう一つの大腸癌をめぐる話題は,大腸癌に対する化学療法の進歩である.すなわち,oxaliplatin(L-OHP)などの新規抗癌剤の開発に加え,Vascular endothelial growth factor(VEGF)やEpidermal growth factor(EGF)受容体(EGFR)を標的とした新しい分指標的治療薬が開発された.特に,EGFRに対する単クローン抗体は,K-ras遺伝子変異の無い癌に有効であることが明らかとなり,これらの遺伝子異常を調べて治療を行う,いわゆる個別化医療の時代に入りつつある.