日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
Fabry病の臨床:最近の治療
衞藤 義勝
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2009 年 98 巻 4 号 p. 875-882

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抄録

Fabry病(Anderson-Fabry disease)は,60種余り存在するライソゾーム蓄積病内の一つであり,厚生労働省の特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されている.X染色体上にあるαガラクトシダーゼA(α-GAL)遺伝子の異常によりα-GAL活性が不足あるいは欠損し,グロボトリアオシルセラミド(GL-3:スフィンゴ糖脂質の1種)が腎臓,心臓,皮膚,自律神経系を初め全身の血管内皮細胞,網内系細胞に蓄積し,様々な症状がひきおこされる.特に幼児期からの四肢の激痛,疼痛,無汗症,皮膚の血管角被腫(angiokeratoma),年齢が進むにつれ心症状(心不全,不整脈,弁膜症など),腎臓症状(たんぱく尿,腎不全),脳血管症状(脳梗塞,頭痛など),角膜混濁などの眼症状,難聴など多彩な臨床症状を呈する.遺伝形式はX連鎖の劣性遺伝をとるが,多くの女性保因者も臨床症状を呈するという特徴がある.頻度としては約4万人に1人とされているが,最近新生児マススクリーニングで3,000~4,000人に1人と発生頻度は高い.腎不全患者の約0.5%,左室肥大患者の4~5%,若年性脳卒中患者の4%程度にFabry病患者が存在するといわれており,各科に渡ることから内科領域でも注目されている疾患である.Figure 1にFabry病の今日までの歴史を示した.

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© 2009 一般社団法人 日本内科学会
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