抄録
ネフローゼ症候群は腎生検患者の約20%を占めている.約15%が一次性腎疾患であり,約5%が全身性疾患に伴う二次性ネフローゼ症候群である.頻度の高い疾患としてループス腎炎,紫斑病性腎炎,糖尿病性腎症があり,まれなものとしてアミロイド腎症,二次性膜性腎症,パラプロテイン腎症がある.ループス腎炎は,若年女性が主体である.病理学的にIV型(びまん性病変)V型(膜型)でネフローゼ症候群を呈しやすい.紫斑病性腎炎は,IgA免疫系が関与し約10%でネフローゼ症候群を呈する.小児に多い疾患であるが中高年でも発症することがある.その際には顕微鏡的多発性血管炎との鑑別が必要になる.二次性膜性腎症は,悪性腫瘍,自己免疫疾患,薬剤性,肝炎ウイルスに関連して生じる.薬剤性の多くは関節リウマチの治療薬としての金製剤あるいはブシラミンで生じ,投薬の中止によって軽快することが多い.その他の膜性腎症では原疾患の治療が優先される.パラプロテイン腎症として,軽鎖沈着症,重鎖沈着症があり,多発性骨髄腫に準じた治療法が有効な場合がある.