2010 年 99 巻 4 号 p. 763-768
甲状腺中毒クリーゼは「生命が危険となるような激しい症状を呈する甲状腺中毒症」であり,多臓器における非代償性状態を特徴とする.甲状腺基礎疾患としては,Basedow病が最も多い.かつては甲状腺亜全摘術後発症する外科的甲状腺クリーゼが多かったが,現在は内科的甲状腺クリーゼがほとんどである.臨床症状に基づいて診断されるが,明確な診断基準は国際的にも確立されておらず,疫学データも乏しい.日本甲状腺学会と日本内分泌学会は共同して,『甲状腺クリーゼの診断基準の作成と全国疫学調査』を臨床重点課題と定め,新診断基準に基づいた全国疫学調査を実施した.その調査結果に基づいて,発症実態の解明,診断基準の改訂,予後規定因子の解析,治療指針の作成が予定されている.