心臓調律の変化が腦機能におよぼす影響を調べる目的で,臨床実験どして諸種不整脈の際の心電図,腦波の同時記録を行ない,洞性頻脈,洞性徐脈,期外收縮の散発による軽度の不整脈および長期間持続している絶対性不整脈等では,腦波に大した異常を来たさないが,発作性頻拍等の突発的におこる頻拍発作とか,洞房乃至房室ブロック等の急におこる徐脈の際には,腦波にΘ波の増加, δ波の出現等を認め,腦機能の低下を来たすことを認めた.更に動物実験により,高度の不整脈を発生させた際に,大腦新皮質,邊縁系および間腦の腦波の変化を追求し,この際に侵される程度は大腦新皮質において強く,深部の大腦邊縁系,間腦等では比較的侵され難いものと考えられた.