1959 年 48 巻 6 号 p. 837-848
Insulin追加分泌の適応刺激が過血糖であるとする説が一般に認められているが, 近時この説を凝わしいとする報告も見られる. 著者は該説の重要な実験的根拠の一つとみなされているFoàらの交叉循環試験を追試したが, 氏らが認めた結果を得ず, さらにInsulin持続注入実験を行ない著者の得た成績がむしろ妥当であると思われる結果を得た. すなわち正常犬の末梢血糖値を下降させるには少なくとも6.0mu/kg/min以上のInsulin量を持続的に注入するを要し, この値は交叉循環試験において糖負荷時に供血犬から受血犬に潅流すると思われる血中Insulin量の実に5倍に相当する. すなわち交叉循環試験によつても過血糖がInsulin追加分泌の適応刺激であることを証明するに足る成績は得られなかつた.