日本内科学会雑誌
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糖尿病および糖代謝に及ぼすサリチル酸塩の臨床的ならびに実験的研究
柴田 敏雄
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1960 年 49 巻 3 号 p. 259-270

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抄録

アスピリン(Aspと略)は糖尿病の高血糖,尿糖を改善するので,著者は臨床および動物実験から経口的糖尿病治療剤としてのサリチル酸塩(Salと略)の價値およびその作用機序を檢討した. 3~6gのAspを單独またはInsulinとの併用で,糖尿病の高血糖,尿糖は低下し,投與中止後再上昇した.ケトン尿の1例はAsp單独投與により消失した.食欲不振,耳鳴りなどの副作用が多く,うち半数は投與を中止した.アロキサン糖尿家兎の高血糖,尿糖は, Salで低下するが低血糖には至らず,しかも健常家兎の正常血糖値は影響しない. Salは,またアドレナリン高血糖を抑制し,さらにコーチゾン糖尿家兎の高血糖,体重低下を改善した.またヒトおよび家兎でブドウ糖負荷試驗の糖忍容カを増加し,焦性プドウ酸値を低下し,血清無機燐の滅少率を低下せしめた.以上より副作用に難点はあるが,経口的糖尿病治療剤として将来性があると思われる.

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