日本内科学会雑誌
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白血病発生機転について
角南 宏入野 昭三西下 秀男白石 彰徳岡田 耕一野村 迪夫
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1961 年 50 巻 2 号 p. 182-188

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抄録

近年白血病患者数は増加の一途をたどりつゝあり,臨床医家の注目をあびるに至つている. Virchowが本症を初めて記載して以来,既に1世紀以上を経過しているが今日未だその発生の原因は不明である.著者は白血病発生機転を解明する目的で,まず実験的研究の手段として,マウス白血病を取り上げて検討した.すなわち発癌物質並びに放射線が白血病を誘発する過程をみるに,造血臓器の低形成が白血病発生に先行し,一定の潜伏期をおいて脾又はリンパ節,胸腺に白血病細胞の増殖が起こり,続いて末梢血液に白血病細胞の増加が見られた.次に著者の経験した前白血病状態と考えられる患者例でも,初め一見再生不良性貧血の如き骨髄の低形成状態に続いて白血病が発生している.以上の結果から推測すると,白血病の発生には遺伝的要素が重要な基盤となるが,それに加えて造血組織の低形成を招くような外的因子が重視さるべきものと考える.

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