日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
好中球アルカリ性フォスファターゼにかんする細胞化学的研究
第1編 各種疾患,特に血液疾患における変動について
塚田 恒安
著者情報
ジャーナル フリー

1962 年 51 巻 7 号 p. 890-899

詳細
抄録

好中球アルカリ性フォスファターゼについては,その生体における重要性ゆえ古くから検索が行なわれてきたが,なお一定の成績を得ていない.簡便でしかも半定量的な表現も可能なazo色素法を用いて,各種の疾患における活性の変動を検索した。本活性の最も著明な変化をみるのは,好中球自体またはその母体たる造血組織の疾患と好中球機能の著明に亢進する急性感染性の疾患とである.造血組織疾患では腫瘍性の疾患の場合に著変をみた.慢性骨髄性白血病の全例,急性骨髄性白血病では半数に著明な低下をみた. di Guglielmo症候群でも,白血病としては急性型をとるが,全例に治療や感染性の合併症にも左右されない著明な低値をとり,一見正常にみえる好中球にも生化学的異常のあることを考えさせた.急性骨髄性白血病で高値をみた半数では治療によつて完全緩解を示した例が大多数で,低値を示した群との差は病期または病勢によつて好中球の生化学的変化にも差があるものと推定せしめる.真性多血症では全例に高値をとつた.これら以外の骨髄性増殖症の低値に対して,リンパ性白血病,リンパ肉腫, Hodgkin,細網肉腫などのリンパ組織及び近縁組織の腫瘍性増殖では著明な高値を示した.非腫瘍性の疾患では,再生不良性貧血全例に著明の高値を認め,免疫学的機序によるITPや顆粒球減少症では中等度の上昇をみた、悪性貧血1例では高値を呈したが,治療で正常に復した.鉄欠乏性貧血,腺熱症候群では正常、急性感染症では著明の上昇を認めたが,治療により症状の軽快と共に全例正常に復した.しかし,亜急性心内膜炎及び多種の膠原病では正常または低値をとつた.その他の疾患では,粘液水腫及び肝硬変で著明な高値を示すものを認め,悪性腫瘍患者で軽度上昇をみた他,内分泌及び代謝疾患でも正常値を呈した.血清アルカリ性フォスファアターゼとの間にも相関を認めなかつた.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top