日本内科学会雑誌
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ネフローゼ症候群を呈した腎腫瘍の1剖検例
上田 泰宮原 正南 貞夫斉藤 司小椋 陽介
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1964 年 52 巻 10 号 p. 1243-1247

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抄録

ネフローゼ症候群を呈する疾患には急性および慢性糸球体腎炎,類殿粉症,糖尿病性腎症,エリテマトーデス,腎静脈血栓症をはじめとして,妊娠中毒症,化学薬品中毒,悪性腫瘍,マラリヤ,梅毒などの多数の疾患がある.本症例は多量の蛋白尿,尿沈渣所見(卵円型脂肪体,重屈折性脂肪小体),低蛋白血症(低albumin血症),血清α2-およびβ-globulinの増加,下腿の浮腫などのネフローゼ症候群の徴候を呈し,右側腎の生検所見などからも一応糸球体腎炎によるネフローゼ症候群と考え,副腎皮質ホルモンの投与を行なったが全く効果はみられず,剖検により左側腎のrenal cell carcinomaと判明した興味ある1症例である.本症例のネフローゼ症候群を呈した理由は明らかではないが,わたくし達の検討では他の原因が考えにくいので,本症候群は腎腫瘍によつて起つたと考える.

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