日本内科学会雑誌
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52 巻, 10 号
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  • 稲垣 義明, 寺尾 清
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1157-1168
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Wuhrmannのいう心筋症と, Hegg1inのいうエネルギー性力学的心不全(“Energetisch-Dynamische Herzinsuffizinz”, EDHI)の重なり合いを,生前における臨床成績のみならず,剖検しえた心筋の病理像からも検討した。このさい, Hegg1in症候群の診断基準には, Hegglinの原著,その後の発表によつても,具体性にとぽしく,かつ,一貫性がみられなかったので,われわれは心・脈管力学的数値を中心に検討し,広義のHegglin症候群と狭義のHegglin症候群(文字どおりのEDHI)とを区別して考えるべきことを提唱し,かつ,その診断基準の目安を述べた.病理的観察では,左右心室筋9ヵ所における単位面積あたりの類粘液変性数の多寡を主な検索の対象とした. 1. Wuhrmann心筋症の1/3には, EDHIをみたが,一方, EDHIと診断された症例の大部分は心筋症とも診断しえた. 2. 心筋症と診断された例の類粘液変性数は,平均を上回る例が多かつた.これにたいして, EDHIでは,平均以上の例が少なく,大部分の例の間質には,血管外膜の層状粗鬆化と急性の浮腫像が認められた.
  • 三神 美和, 小山 千代, 荒木 仲, 阿久津 初枝, 小林 成子, 菅野 照子, 武藤 真吏乃, 橋本 真佐子
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1169-1175
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    われわれは5才から30才までの男女3810名に数回にわたり血圧測定を行ない,若年性高血圧症の発生頻度を調査した.その結果65名(1.71%)に高血圧者を認め,その発現年令は12才以上であることを知り得た.これら全例に心電図,胸部X線撮影,眼底検査,尿蛋白,腎機能,肝機能,血清電解質などの諸検査と, RegitinおよびMecholyl等の薬物テストを行ない,いわゆる若年性本態性高血圧症と診断し,これらの尿中カテコールアミン量を測定して,比較的高年者本態性高血圧症と比較検討した。その結果,若年性本態性高血圧症の昇圧機序の一部には循環カテコールアミンが関与していることは明らかであると思われるが,一方尿中カテコールアミンの排泄量が正常値を示すもののあることより、カテコールアミン代謝過程での酵素系の関与の仕方,あるいは血管壁のカテコールアミン受容体の状態が,若年性本態性高血圧症特有の姿を有するものと考えられる.
  • 柳沼 碧
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1176-1188
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甲状腺と赤血球産生との関連を明らかにする目的で,甲状腺機能低下時の造血能の実態につき臨床的並びに実験的に検討を進め,これとerythropoietin (Ep)および甲状腺ホルモンとの関連について検索した. 5例の甲状臓機能低下症患者はいずれも種々の程度の貧血を認めたが,赤血球の形態異常なく,骨髄は低形成性でG/E比の上昇がみられた.血清鉄の低下と不飽和鉄結合能(UIBC)の上昇を示したのは1例のみであつたが, 3例は貧血の改善に鉄剤の併用を要した. ferrokineticsにおいて血漿鉄消失速度(PID)は正常上限であつたが,赤血球利用率(% RCU)は正常であつた.赤血球寿命は軽度短縮した. Ep活性はいずれも低下し,治療により基礎代謝率が正常化するとEP活性も正常化し徐々に貧血は改善した. 甲状腺摘出家兎は貧血発現し骨髄の低形成化, G/E比の上昇, PIDの遅延および% RCUの低下も認めた.血漿中heme合成促進因子(HSAF)およびEp活性共に低下した,瀉血あるいは低圧による低酸素刺激を加えると造血能は亢進し, HSAFは上昇した.以上より甲状腺機能低下又は脱落に基づく貧血は造赤血球能低下を主因とするもので,この際甲状腺ホルモンの欠乏による酸素消費の減少がEp産生を低下し,これが造赤血球能を低下すると考えられる.
  • 大山 ミヨ子
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1189-1199
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Porphyriaの病態は来だ解明されたとは言い難く,動物実験の成績も充分とは云い難い.著者はhexachlorobenzeneを家兎に経口投与することにより,ヒトの急性間欠性porphyriaに類似した臨床症状および尿所見を起こし得た,この実験家兎において尿中porphyrin体,プリン体,クレアチンおよび既成クレアチニンの変動,血清transaminase, cholinesterase活性,肝および赤血球のcatalase活性の変化を経過に従い測定した.又経過中に観察された筋萎縮および全身痙攣の本態を解明するため,筋電図検索を行ない, myogenicおよびneurogenic atrophyを示唆する所見を得た.筋生検の結果,電顕的にも光顕的に屯筋萎縮を示す所見を得た.一方各種臓器より抽出したporphyrin体の測定を行ない,肝に特異的にcopro-およびproto-porphyrinの増量を認めた.剖検成績では肝小葉中心部に脂肪変性を認め,又脊髄前角細胞,大脳皮質下神経細胞などに軽微ではあるが変性像を認めた.最後に動物実験の成績と人間のporphyriaのそれとの異同を論じた.
  • 山田 弘三, 柴田 昌雄, 小出 忠孝, 青山 克巳, 久野 勉
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1200-1205
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病において血中insulin活性(ILAと略す)を研究することは最も本質的な問題である.わたくし共は102名の糖尿病者のILAを下垂体・副腎剔出ラットに対する抽出insulin fractionの血糖降下作用を利用するin vivo法により測定し,糖尿病の病態,特に動脈硬化症との関係について研究した.糖尿病者のILAは正常人とほゞ同様の高い活性値より,測定不能の低値に至るまで広く分布する.若年性,重症,やせ型,病歴の長い糖尿病は,壮年性,軽症,肥満型,病歴の短ひい糖尿病に比し血中ILAは低い.血管合併症を有する糖尿病は合併症のない糖尿病に比し,血中ILAの低下を認め,合併症の頻度が増す程低下する傾向を認める.血管合併症を有する群の中て、脂質代謝異常群は正常群よりILAの低い傾向を認める.以上わたくし共の測定法によるILAは糖尿病の臨床像と密接な関係を有しており,特に血管合併症の発症ないしは進展にかんしてinsulinが直接あるいは間接に重要な役割を演じていることを示唆する.
  • 並木 正義, 栗原 春仁, 藤田 浩也, 中西 孝美, 新崎 隆一, 前沢 貢
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1206-1212
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    北海道日高アイヌにつき胃集団検診を行なうかたわら,血液などにかんしても種々の臨床的検査を行ない,和人との比較において検討してみた.その結果,智については,アイヌにおいて牛角胃,瀑状胃を呈するものの割合が和人にくらべてはるかに多く,胃カメラ所見で変化を有するものは和人に比して著明に少なく,また無酸がほとんどみいだされなかつた.一方,自覚的に胃症状を訴えるものもあまりなく,ともかくアイヌに胃疾患の少ないことをたしかめることが出来た.血液にかんしては,血球数,血色素,ヘマトクリット値,血液像については,和人との間に有意の差なく,血清の鉄,銅の値もまた有意差がなかつたが,血清総コレステロール値の低い傾向,および血清蛋白分画値におげるアルブミンの減少,グロブリンの増加傾向は,和人に比し有意の差がみとめられた.
  • 佐野 忠弘
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1213-1223
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    従来,大量のアドレナリン投与により,流血中に,一過性に,栓球数増加の起こることは記載されている.しかし,意外にも生理学的意義の考えられる量のアドレナリンによるそれは記載がない.こゝで総計196匹のウサギを用い,アドレナリン毎kg 0.1, 1,10μg/kg静注5~30分後,流血中に著明な栓球数減少をみ,しかも,この減少が,粘着性栓球数減少によることをMoolten & Vromanの変法により確認した.本作用は脳下垂体摘除,後部視床下部破壊,中脳切断後も認められることを観察した. また,副腎摘除の他腹腔動脈結紮後も本作用はみられる.即ち脾•肝等内臓諸臓器への一時的貯留は認められなかつた.また生体血管の顕微鏡観察により,血管壁への栓球粘着像を認めたことから,アドレナリンの栓球減少作用は,血管壁への栓球の粘着現象(platelet sticking reaction)によると考えられた.アドレナリンのこの量は,生体、が諸種stress下分泌する程度の量に一致し,同時に,血液凝固性亢進をきたすというCannonの知見からも,本作用が生体の止血機構の一環に役立ちうることが想定される.
  • 相沢 洪志
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1224-1234
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    リウマチ熱を抗炎症薬で治療すると,急性期反応物質とくにCRPは速かに陰性化するが,ここで治療を中止するとしばしば再燃がみられる.したがつて急性期反応物質の正常化は必ずしも活動性の消退を意味するとは限らないので,未だに治療中止時期の指標となるものがない.わたくしは本時期の決定にかんしコンドロイチン硫酸負荷試験(CST)を行ない臨床的ならびに基礎的実験によりCSTの有用性を確認し,さらにこれらの成績に基づき臨床的意義についての検討を加えた.すなわち本症が活動性の時にはCSTは健康人と逆の陽性を示すものが多かつたが,.発症10週頃より健康人と同傾向の陰性化がみられた. CST陰性時期には急性期反応物質に異常値を示すものもあつたが,本時期に治療を中止した症例には何らのrelapseもみなかつた.しかるに陽性時期に治療を中止すると,全例にrelapseの症状が出現し心電図•心計測所見でも再悪化がみられた.したがってCSTは治療中止時期の決定として利用しうることが判明し,かゝる指標となることを臨床的に証明した. CST陽性時に治療を中止した場合の症状•検査成績の再悪化所見は,陰性時のそれと態度を異にしたのでrelapseと考え, CSTによりreboundとは明確に区別しうることを認め、さらにCSTを利用して全炎症過程を算定した結果よりprednisolone早期大量投与法の有効性を示した.また基礎的実験によリアリールアミン処置家兎に行なつたCSTの成績より動物実験でも本反応が確認され,試験管内実験よりCSTの陽性化をめぐり若干の考察を加えた.
  • 伊藤 綏
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1235-1242
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心臓に原発する悪性腫瘍は稀なもので,今までのほとんど全てが心筋よりの肉腫と心包上皮からの上皮腫である.これら腫瘍はJonášによれば,現在までに全世界に181例が報告されている.このうちhemangioendotheliomaはさらに稀で, 20例には達しない.本腫瘍はRedtenbacher (1889)により初めて報告され, McNal1ey (1962)による例が最も新しいものである.わたくしは最近その1例を経験したので,その臨床所見および病理解剖所見を報告する.症例41才,男.主訴:胸部圧迫感,体動時の動悸と息切れ.現病歴:昭和37年12月初旬感冒様症状発現,発熱37.5°C.近医の治療により一旦軽快して出勤せるも,全身倦怠感残り, 20日頃より主訴が起こり臥床するにいたる.以来症状次第に悪化.昭和38年1月8日入院す.入院時現症ならびに経過:体格中等大,栄養状態かなりやせ,顔貌無欲状,顔色蒼白,口唇チアノーゼあり,起坐位をとる.舌乾燥し,可視粘膜貧血状,リンパ節腫張せず,脈拍120/分,整,緊張弱く,呼吸数26/分安静時でも呼吸困難あり,血圧102/90mmHg,心濁音界両側ことに左方に拡大,左界は前腋窩線よりも外方にあつた.心尖拍動触知せず,心音は微弱なるも弁口には雜音を聴取せず.左胸郭僅かに隆起し,両背面下部打診音短,呼吸音減弱す.腹部全般に膨隆し,肝3横指幅触知し,圧痛あり,腹水は認められなかつた.下肢に浮腫あり,膝蓋腱反射の亢進を認めた.臨床検査は全身症状重篤のため充分に行なえなかつたが,貧血,蛋白尿,低蛋白血症, GOTの上昇がみられ,胸部X線写真および心電図に心包炎の所見が認められた.入院後直ちに利尿薬,強心薬次いで抗生物質,副腎皮質ステロイドを用いたがほとんど効果現われず, 13日後朝食をすませ体位変換を行なつた時,突然心拍停止し死亡した.剖検所見:心房中隔前半部に胡桃大弾性硬の腫瘤あり,左方は大動脈根部に接し,右方は右心耳内に突出している.割面は灰白黄色充実性で,一部は高度出血壊死性である.心外膜はぴまん性に赤褐色絨毛様物で覆われ,凝塊が付着している.心包腔には1,200mlの血性液がたまつている.これがタンポナーデとして,直接死因になつたものと思われる.心臓の他の部には特記所見なし,全身所見は略す.組織学的には充実性の部では大形の異形性血管内皮細胞の増生がみられ,既に管腔構成傾向を見る.出血壊死性部では海綿状血管腫様に毛細管増生をみるが,内皮細胞にはなお異型性腫大を示すものがある.鍍銀染色では血管様構造が一層明瞭に示される.以上の所見からhemangioendotheliomaと診断した.
  • 上田 泰, 宮原 正, 南 貞夫, 斉藤 司, 小椋 陽介
    1964 年 52 巻 10 号 p. 1243-1247
    発行日: 1964/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群を呈する疾患には急性および慢性糸球体腎炎,類殿粉症,糖尿病性腎症,エリテマトーデス,腎静脈血栓症をはじめとして,妊娠中毒症,化学薬品中毒,悪性腫瘍,マラリヤ,梅毒などの多数の疾患がある.本症例は多量の蛋白尿,尿沈渣所見(卵円型脂肪体,重屈折性脂肪小体),低蛋白血症(低albumin血症),血清α2-およびβ-globulinの増加,下腿の浮腫などのネフローゼ症候群の徴候を呈し,右側腎の生検所見などからも一応糸球体腎炎によるネフローゼ症候群と考え,副腎皮質ホルモンの投与を行なったが全く効果はみられず,剖検により左側腎のrenal cell carcinomaと判明した興味ある1症例である.本症例のネフローゼ症候群を呈した理由は明らかではないが,わたくし達の検討では他の原因が考えにくいので,本症候群は腎腫瘍によつて起つたと考える.
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