日本内科学会雑誌
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疲労の臨床
渡辺 仁
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1963 年 52 巻 2 号 p. 135-140

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抄録

1) 疲れ易いと訴えて内科医を訪れる患者は最近増加しているが,それらの総べてに精確な診断を下すことはなかなか困難である.昭和27年3月から7月までの5カ月間に当科を訪れた1773名の外来患者の中,疲れ易い乃至は倦怠感を主訴としたものが92名あつた.その内訳は脚気(27名),感冒(12名),腎炎(12名),肝炎(5名),貧血(5名)である.その中にはほとんど認めるべき他覚的所見がなく,他医で誤診されていたものがあつた.一方気管支喘息11名中9名が疲労感なしと答えていた.低血圧症は総べて疲労性を訴えたが,高血圧症では尿蛋白のあるものが疲労感を訴えた.2) 労作が各種疾病を誘発し悪化させることは度々指摘されて来た.それについてわれわれは若干の実験を行なつた.運動を負荷すると初め交感神経優越に傾き,ついで副交感神経緊張に傾く.交感神経は網内系機能を促進するように働き,副交感神経は網内系機能を抑制する,網内系機能は運動が激しいと機能低下に傾くが,副腎皮質機能はかなり強度の運動負荷に際しても亢進的である.老人は若年者に比し疲労感を訴えることは少ないが,運動負荷した場合肝機能および網内系機能の低下度が強く,回復するのに時間がかかる.

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