1964 年 53 巻 3 号 p. 249-254
下垂体副腎皮質系の中枢性調節機序解明の目的で,大脳辺縁系に属する帯状回の電気刺激実験を行なつた.成犬を用い,モルヒネ前処置後,帯状回前部および後部に直視下に電気刺激を加え,頚静脈血中ACTH量の変動を逐時的に,オキシセルローズ吸着,下垂体摘出ラット副腎アスコルビン酸減少法をもつて測定した.刺激により帯状回前部および後部いずれの部位においてもACTH量の急激な上昇が認められ,同時に散瞳,呼吸抑制,血圧変動(多くの場合低下),排尿等の自律神経性反応もみられた.下垂体摘出後にはACTHの変動は消失するが,自律神経性反応はなお認められた.これに対して上前頭回刺激時には,血中ACTHの変動も,自律神経性反応もみられなかつた.以上の成績から,帯状回は,自律神経性機能の高位中枢であるとともに, ACTH分泌調節にかんしても大脳辺縁系の一環として関与していると結論した.