日本内科学会雑誌
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東京大学医学部中尾内科
折茂 肇
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1964 年 53 巻 9 号 p. 1154-1162

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抄録

実験的腎障害が副甲状腺機能に及ぼす影響について犬を用いて検討した.副甲状腺機能検査法としては蓚酸Na負荷試験を用い,実験動物には両側腎摘犬,両側尿管結紮犬,酒石酸ソーダ投与による近位尿細管障害犬,および昇汞注入による遠位尿細管障害犬を用いた.その結果,酒石酸ソーダ投与による近位尿細管障害犬および腎摘犬においては蓚酸Na点滴による低Ca血症からの回復が著しく速く,副甲状腺機能亢進を示唆し,一方昇汞注入による遠位尿細管障害犬および両側尿管結紮犬においては低Ca血症からの回復は正常犬とほゞ等しく,副甲状腺機能は正常と推定された.細尿管障害部位は組織学的ならびに機能的にPSP排泄試験,濃縮試験, pitressin試験を行ない推定した.従来慢性腎疾患にしばしば認められる副甲状腺肥大の原因としては,血清P上昇,血清Ca低下が想定されているが,われわれの実験では腎摘犬,酒石酸ソーダ注入による近位細尿管障害犬においては血清Caはともに正常であり,従来の説のみでは説明困難と考えられる.

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