1966 年 55 巻 9 号 p. 964-981
疾病や老化現象等の諸相を,身体的側面と心理的側面の相互関係から究明する目的をもつて研究を進めた.本論文においては,今後の疾病単位の研究基礎となる総括的対照知見を得るために,年令要因を基本にした分析を行なうべく,加令に伴なう諸因子の変動を心身相関的に検討した.とくに,老年期における器質機能変化は,自然的に発生する生理条件の片よりともみれるが,その場合の心理的動向・特性を, Taylor-MASおよびRorschach testにより分析して,器質的・機能的老化指標の推移に照合した.その結果,老年者の心理特性は暦年令による区分成績よりも,形態的・機能的変化の推移によく平行し,とくに,老化現象の進展度を判断する上には,心理分析結果を基礎とする意義が極めて大きいことを明らかにした.