本邦では1957年ごろより異常血色素の本格的検索がはじめられたが,著者は戦後わが国に残された混血児達により,従来本邦に存在しなかつた異常血色素の遺伝因子が導入される可能性を考え,その実態を明らかにせんとして混血児179名について異常血色素の検索を行ない,また同時に東京,神奈川在住本邦人3000余名についても異常血色素の検索を行なつた.その結果,本邦人3000余名中よりは1例も異常血色素を確認できなかつたが,混血児179名中よりは2例に異常血色素を確認した.この比率は約1.1%である. 1例は森田 白井が先に報告したHb A+S症例であるが,著者は新たにHb A+Gを有する混血児を確認し,本児の血色素をHb A+GOmoriと命名した.かゝる事実は,彼らにより現在,異常血色素の遺伝因子が本邦に導入されつゝあることの実証であり,わが民族衞生学上軽視できない問題であると考えられる.