日本内科学会雑誌
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若年早期胃癌患者を発端者とする癌多発家系
森 昌朋福田 玲子青木 秀夫樋口 次男関口 利和小林 節雄
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1974 年 63 巻 12 号 p. 1444-1452

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抄録

最近Lynch, H. T.らは一家系のなかで種々の器官に癌を発生し,その癌に罹りやすい性質がMendelの優性遺伝の様式をとる「癌家系症候群」なる1独立疾患単位の存在を提示した.わたくしたちは胃集団検診により明らかにし得た25才の若年早期胃癌患者を発端者とする1家系を調査し, 4世代185名中に15例の癌を確認し,未確認例を加えると19名に癌発生を認めた.この家系資料を分析した結果,本家系の癌は常染色体性優性遺伝の仮説に合致し,浸透度は75~80%と推定された.しかし腺癌の確認し得た例が多くないこと,胃癌が多数を占め,大腸癌や子宮体癌が少ないこと,一個人に原発癌の重複したことを認め得たものは1例にすぎないことなどはLynchらのいう症候群の判定基準と完全に合致するとはいいがたいので,癌多発優性遺伝子が一種類でないことを意味するのかもしれない.なお,第4世代に若年者癌の多発が認められるが,この世代はまだ比較的若年者が多いので,老年に至り癌発症がみられ若年者発癌の傾向が打ち消されるか否かは今後の追跡調査によらねばならない.

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