日本内科学会雑誌
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右室機能にかんする研究とくに心肺疾患を中心として
兼本 成斌
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1974 年 63 巻 4 号 p. 368-377

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抄録

著者は,慢性肺疾患の右室機能の特徴を明らかにする目的で, 131I-MAAの体外計測法により右室残留血液量率(RVRR)を測定する方法を用いて,軽度ないし中等度の肺高血圧を有する肺疾患例を,同程度の肺高血圧を有する心疾患例および循環正常例の右室機能と血行力学的に比較検討した.その結果,肺疾患例の特徴的所見は, RVRRの上昇であり,これは慢性hypoxiaの右室心筋への直接作用または動脈血酸素分圧(Pao2)の低下が肺小動脈血管抵抗の増大をもたらしたことによる,あるいはこの両者に由来すると考えられた.これは, hypoxiaのないRVRR正常例のacute hypoxia testによりPao2の低下に伴いRVRRは全例上昇したことからも確認された.さらに,最近注目されてきた拡張期の圧一容量関係からみると,右室においては一定の傾向はなく肺疾患例では,拡張末期容量(EDV)の増大にもかかわらず,拡張末期圧(EDP)の上昇は僅かであることから,右室心筋はむしろcompliantな状態にありEDVの変動が必ずしもEDPに反映されないものと考えられる.従つて右室においてはEDVがより鋭敏かつよりよい指標であり,右室の行動を評価するにはぜひともEDVの測定が必要であることをのべた.

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