日本内科学会雑誌
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Angiotensin II analogue (1-sarcosine, 8-isoleucineangiotensin II)の臨床応用にかんする研究
荻原 俊男熊原 雄一山本 智英
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1974 年 63 巻 6 号 p. 539-546

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抄録

Angiotensin II (AII)の特異的拮抗物質としてA II analogueが開発され,現在最も強力,持続的物質として1-Sar, 8-Ile-A IIが紹介されている. A II analogueの人体応用により,ヒトにおける各種高血圧症,二次性aldostrone症等におけるA IIそのものの昇圧作用の意義について検索できる可能性があり,血圧調節におけるrenin-angiotensin-aldosterone系の解明にさらに多くの情報をもたらすものと考えられるが,現在までのところ本物質の人体応用にかんする報告はなされておらず,ここでは本物質の毒性試験施行後,臨床応用の可能性を検討した.健常人においては本薬50ng/kg/minの点滴により外因性A IIに有意な競合的拮抗を示し,その作用はほゞ5分後より出現し, 50~100分持続した.本薬の臨床応用を試み, i)本態性高血圧(正renin)6例では無反応, ii)低renin性の本態性高血圧およびCushing症候群の1例では昇圧, iii)悪性高血圧症3例のうち高renin,発症後1年未満の1例では有意に降下,他の正renin発症後10年以上の2例では無反応, iii)偏側腎血管性または腎硬塞性高血圧症6例(高renin)のうち発症後1年の1例は有意に降下, 3年の1例は軽度降下したが他の慢性例は高reninにもかかわらず無反応であつた.腹水を伴う肝硬変の1例では正常血圧からさらに著明な血圧降下が認められ,本病態におけるA II上昇が血圧維持に重なる意義を持つているものと考えられる,本薬は高血圧症の診断のみならず治療面への応用も期待される.

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