日本内科学会雑誌
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肝障害時における糖代謝異常について
小関 亮一
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1975 年 64 巻 4 号 p. 317-327

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抄録

肝障害時の糖代謝異常について,主としてインスリン分泌面より検討した.方法としては糖負荷およびトルブタマイド試験における血中インスリン(以下IRIと略す)の動態と, CCl4肝障害犬にブドウ糖負荷した際の膵静脈,門脈および未梢血中のIRIと血糖の変動を観察した.肝疾患におけるブドウ糖負荷によるIRI反応は過剰反応を示すが著者の実験でも同様の結果であつた.肝障害犬も対照犬に比して負荷後のIRIは総べて高値を示した.しかしブドウ糖負荷前の膵静脈血では肝障害犬と対照犬との間に差異がなく,門脈血および未梢血では肝障害犬に高値を示した.これらの事は肝障害犬では負荷後の過剰反応は膵よりのインスリン過剰分泌が主因であり,肝でのインスリンの破壊に障害がある事を示唆している.トルブタマイド投与時のIRI反応ではブドウ糖負荷と異なり過剰反応は少ない.また正常反応を示す症例の中でも血糖下降率の悪いものが多い.過剰反応を示したものの中でも血糖下降率は必ずしも良くなく,このトルブタマイド試験による血糖とIRIの変化は,肝障害によるトルブタマイドの感性の低下よりもインスリン作用の低下を考えた.

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