日本内科学会雑誌
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Indocyanine green高度停滞を示した家族内集積にかんする臨床的観察
水野 信彦関 道雄中村 功小島 幹代石川 和美楢林 尚中治 隆宏老籾 宗忠大江 勝馬場 茂明岡田 聡武田 善樹
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1975 年 64 巻 4 号 p. 349-356

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抄録

4人家族(父,母,兄,発端者)のうち, HB抗原陽性,慢性肝炎の発端者,および無症候性HB抗原キャリヤーの兄,および慢性肝障害を持つ母の3人にインドサイアニングリーン(以下ICGと略す)試験高度停滞を示す家族内集積を経験した.このうち,ブロ一ムスルホンフタレーン(以下BSPと略す)試験をなしえた兄と母にBSP (R45)軽度停滞が認められたが, ICGとの間に著明な解離がみられた.また, ICG血漿消失曲線を検討すると, 15分までは直線状に下降し, 20分において変曲点を持ち,一時平坦となり, 25分以後再び直線的に下降する特有な曲線をこれら3症例のいずれにも認められた.また, ICGと血清蛋白との結合様式をSephadex G-200によるゲル濾過法を用いて検討すると,本症例は,基本的に正常対照例と同じ結合パターンおよび結合比を示し,有意の差を認められなかつた.発端者の病態時の組織学的検索で,光顕では慢性肝炎活動型の像を呈し,電顕では慢性肝炎時に見られる変化以外に本症例に特異的所見は得られなかつた. ICG試験高度停滞の病態生理学的意義は現在の所不明であるが,われわれの以上の検討から, ICG試験高度停滞はICGと血清蛋白の結合異常によつて招来されるのではなく,肝細胞膜か,あるいは肝細胞内蛋白,もしくは何らかの転送機転における異常によるものと推定され,この質的異常は,肝障害による変化とは別に遺伝的背景を持つた異常であると考察される.

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