日本内科学会雑誌
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担癌生体のストレプトリジンO皮内反応と細胞性免疫の示標について
小松 文夫
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1976 年 65 巻 6 号 p. 560-568

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抄録

Microbial antigenを用いた遅延型過敏反応を観察することによつて細胞性免疫を推測する試みは,近年しだいに注目されてきたが,ヒトに感染する機会のきわめて多い溶血性連鎖球菌の菌体外毒素ストレプトリジンO (SLO)に遅延型過敏反応がみられるか否かをみ,細胞性免疫の示標となりうるかを検討した.まず, Hartley系モルモットをSLOとFreund's complete adjuvantで感作し, 2週間後の皮内反応で, 48時間をピークとする発赤と,著明なリンパ球の浸潤をきたすことが認められ,遅延型過敏反応であることが確認された.そこで癌患者およびその他の疾患々者に皮内反応を試みた.栄研製SLOl号20%溶液0.1mlを前碗皮内に接種し, 48時間後の発赤の程度を測定し,同時にPPD・DNCB各反応,リンパ球幼若化率と比較した.その結果, SLO皮内反応はつぎのような特微を示した.すなわち,正常者での陽性率が高く,加令による反応の低下は少なく,感染症では一般に強陽性を示した.癌患者および細胞性免疫の障害が推測される症例では著明に低下していた. SLO皮内反応はPPD・DNCB各反応との相関性を有し,また皮内反応の低下にしたがつてリンパ球の幼若化率も低下した.以上の結果より, SLO皮内反応は細胞性免疫の状態を反映すると考えられ,細胞性免疫の一示標として,臨床応用が可能と思われた.

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