日本内科学会雑誌
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全身型重症筋無力症の副腎皮質ホルモン少量持続療法を中心とする免疫抑制療法
市川 幸延中田 安成郡山 健治小松田 光真有森 茂小橋 秀広多田 慎也三橋 朝子
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1976 年 65 巻 7 号 p. 669-680

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抄録

重症筋無力症(以下MG)の病因として自己免疫説が注目されてきたにもかかわらず,本症に対しては副腎皮質ホルモンは一般に無効とされていた.最近になつて本剤の大量療法が難治全身型の本症に有効であることが見直されたが,なおその適応には種々の限界がある.わたくし達は胸腺摘出術(以下Thx)施行後の全身型MG8症例およびThx未施行の全身型MG8症例に対してprednisolone 5~10mg/dの少量持続療法を試みた.その結果, Thx施行後あるいは未施行のいずれの群でも60~75%の寛解あるいは著明改善例を認めることができ,効果発現時期は2~3カ月,寛解もしくは著明改善に到達するに要した期間は3~5カ月であつた.本療法開始後の臨床経過では一部の症例に1~2カ月以内に比較的不安定な時期がみられたが,これは抗cholinesterase剤(以下抗ChE剤)に対する神経筋接合部の反応性が増したためcholinergicに傾いたためであり,抗ChE剤を徐々に減量していくことによつて症状は好転し,この時期をすぎた3~5カ月頃には微量の抗ChE剤で安定した効果が得られるようになつた.本療法は少量であるところから従来の大量療法に較べ副作用はほとんどなく,一部の難治例に限られることなく軽症全身型MGにも応用できる点で適応の広い治療法であることが判明した.胸腺組織および末梢リンパ球にも検討を加え,本療法は胸腺(胚中心)ならびにリンパ球に働き,これらの異常を是正するとともに運動神経終板に結合する自己抗体の産生と機能を阻害すると考えられた.

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