母が重症筋無力症で死亡し,子が特発性副状腺機能低下症と診断された症例について報告する.症例1(母): 50才,主婦.眼瞼下垂,脱力感を主訴として入院. neostigmine試験陽性.筋電図でwaningが認められ,重症筋無力症と診断された.胸腺腫および胸腺過形成があり,胸腺切除術にて症候は一時改善したが,約9年後,呼吸筋麻痺を来たし再入院,肝障害,皮膚Candida症,糖尿とともに,高γ-globulin血症,抗筋抗体の検出, phytohemagglutinin添加リンパ球培養における芽球化の抑制等,種々の免疫異常を示唆する検査成績を呈し,死亡した.また剖検では,横紋筋,肝,膵,甲状腺等にリンパ球浸潤が認められた.症例2(子): 30才,男,大学病院職員,下痢の後にtetany発作あり,血清カルシウムは低値で血清燐は高値.尿細管燐再吸収率99%, Ellsworth-Howard試験で尿中燐およびcyclic AMPの増加反応が著しく,特発性副甲状腺機能低下症と診断された.その後vitamin D
2の投与により症状は消失,検査成績も正常化して現在に至つている.重症筋無力症,特発性副甲状腺機能低下症はいずれも自己免疫機序の関与が考えられており,また,家族内での発症もしばしば認められている.ここに報告した症例のつながりについても,遺伝的背景を持つ自己免疫機序とのかかわりを否定できないと思われる.
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