日本内科学会雑誌
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Destructive chondroarthropathyの1例
奥平 博一松多 邦雄西沢 常男村田 克己赤岡 家雄
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1976 年 65 巻 9 号 p. 897-905

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抄録

比較的若年に発症し,全身骨関節の高度の破壊性変化を伴う珍しい仮性痛風の1例を報告する.症例は70才の男性. 38~39才頃右母趾の疼痛発作をもつて発症し,その後手指,足趾の炎症発作さらにとくに誘因のない脱臼,椎間板ヘルニア等をくりかえした.経過中手足の温痛触圧覚の低下を自覚した. X線写真で膝関節半月板に石灰沈着像をみ,膝関節半月板生検および関節液検査にて,弱い正の複屈折性を示し尿酸塩とは異なる結晶の存在を確認した.当結晶はX線回折によりピロリン酸カルシウムであることが同定された. McCartyの診断基準によつて本症例はdefiniteの仮性痛風と診断された.入院時のX線写真では脊椎,手,足,肩等に高度の破壊性変化がみられた.発症および破壊性変化の出現は38才頃と推定されたが, 58才時のX線写真では脊椎の破壊はすでに高度であつた.この頃行なつた手関節生検にて軟骨表層の石灰化所見が認められ,慢性滑膜炎の存在は明らかであつた.本症例においては高尿酸血症がみられたが,糖尿病,高血圧,腎障害,副甲状腺機能亢進症,ヘモクロマトーシスは否定された.神経原性疾患は,知覚異常のため,関節軟骨の障害を来たしやすく,仮性痛風の出現した例が報告されている.しかし本例においては神経原性疾患の存在も認められなかつた.若年に発症する仮性痛風は遺伝性が濃厚であると考えられているが,本例においては明らかな遺伝的負荷は存在しなかつた.

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