日本内科学会雑誌
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Sheehan症候群発症後に黄色腫,冠動脈狭窄の進展をきたしたと思われるIII型高脂血症の1例
亀谷 富夫多々見 良三上田 良成上田 幸生羽場 利博伊藤 清吾小泉 順二太田 正之宮元 進上田 操馬渕 宏元田 憲斉藤 善蔵竹田 亮祐
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1977 年 66 巻 5 号 p. 552-557

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抄録

下垂体前葉機能低下症に合併した高脂血症の報告は少なく, III型と確定診断され報告された例はみあたらない.本症例は38才の主婦で,約11年前に出産時大量出血あり,その後下垂体前葉機能低下症状が出現し, 4年前より全身に黄色腫を認めるようになつた.入院後の各種負荷試験ではTSH, ACTH, LH, HGH, IRIの低反応が認められSheehan症候群と診断された.また血清トリグリセリド,コレステロール(以下chol.と略す)はそれぞれ898, 500mg/dlと高く,リポ蛋白のアガロース電気泳動でbroad-β bandとβ-VLDLを認め超遠心法にてもVLDL Chol値の上昇がみられ, Fredrickson分類のIII型高脂血症と診断された. III型高脂血症は動脈硬化をきたしやすいことが知られているが,本症例でも冠動脈造影にて両側の冠動脈に約50~70%に及ぶ狭窄が認められた.乾燥甲状腺末と副腎皮質ホルモン剤の治療により血清脂質は正常化したが, broad-β bandは持続し,超遠心法でもVLDL-Chol値は高値のままであつた.また治療2カ月では黄色腫に少し消退が認められた.以上の観察により,本症例では潜在的な原発性III型高脂血症があり,これが出産時の大量出血による下垂体前葉機能低下により増強されて黄色腫の発現に至つたものと考えられる.

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