日本内科学会雑誌
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単クローン性免疫グロブリン血症を伴つた悪性貧血の1例
奥村 英正上田 征夫小野沢 成子菊池 恭一越村 修野村 武夫
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1978 年 67 巻 10 号 p. 1242-1247

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抄録

悪性貧血に単クローン性免疫グロブリン血症を伴うことは,世界中で希に報告されている.本邦では勿論報告をみないので1例追加する. 66才の主婦.鼻出血と紫斑を主訴として入院.理学的には貧血,舌萎縮,心尖部収縮期雑音,振動覚の軽度の異常を認めた. Hb 6.8g/dl,赤血球150万/mm3, MCV 133μ3,白血球数4100で過分葉を示し,血小板数9.1万/mm3,骨髄は巨赤芽球と赤芽球増生像を示した.血清VB12の低下,葉酸値正常,胃液の無塩酸症, Schilling test 3.6%,尿にBence Jones蛋白陽性,血清にM蛋白(IgA K型)を認む.骨髄のplasma細胞は異型性を示し, 10.8%,血清胃壁細胞抗体陽性,内因子抗体陽性,骨にはX線学的に異常なし.単クローン性免疫グロブリン血症は無治療に拘らず2年間無症状である. VB12治療によるも軽度の貧血と血小板減少症は持続している,興味ある点は, VB12治療により一時的にlgAの減少とBence Jones蛋白の消失, IgGとlgMとγ-グロブリンの増加をみた.良性単クローン性免疫グロブリン血症も否定しえないので経過観察中である.

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