日本内科学会雑誌
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ACTH,成長hormone, insulinおよびaldosterone分泌不全を伴つた慢性甲状腺炎の1例
水野 兼志阪上 通明松井 遵一郎春山 和見中嶋 凱夫福地 総逸
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1979 年 68 巻 4 号 p. 404-409

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抄録

慢性甲状腺炎に副腎皮質酵素欠乏症による選択的低aldosterone症を合併し,さらにACTH,成長hormone (GH)およびinsulin (IRI)分泌不全を伴つた,きわめて希な1例を報告する.症例は43才の女性.昭和52年9月,易疲労感を主訴として入院した.入院時検査成績では血清K 6.0mEq/l,血清Na 136mEq/l. BMR-29%, triosorb 21%, TRH負荷試験にてTSHは過大反応を示した.甲状腺生検所見では,間質の増加と小円形細胞の惨潤が認められた.安静時血漿renin活性(PRA)および血漿aldosterone含量(PAC)はそれぞれ1.4ng/ml/h, 2.9ng/dl.血漿cortisol含量(F)は正常であつたが,血漿corticosterone含量(B)および血漿18-OH-B含量はそれぞれ1.33μg/dl, 50.0ng/dlと共に著明な高値を示した. renin放出刺激試験によりPRAは過大反応を呈したが, PACは上昇しなかつた. angiotensin IIおよびACTH投与により, PACは殆ど上昇しなかつた. methyrapone投与により,尿中17-OHCS, 17-KS排泄量および血漿ACTHは上昇しなかつた.ブドウ糖ならびにarginine投与により, GHおよびIRIも上昇しなかつた.間接蛍光抗体法により,本患者血清中に抗副腎抗体が証明された.以上の結果より,本症例は自己免疫機序により甲状腺,副腎皮質,下垂体および膵臓に障害を来たしたものと結論した

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