日本内科学会雑誌
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農村における循環器疾患
木村 武
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1980 年 69 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

脳血管障害死亡率の高率なる東北地方農民の高血圧成因究明と予防対策として,血圧研究を開始して30年になつた.その主なる結果を示す. (1)当初は主食生産を基盤とする農山漁村の地域差によつて高血圧検出率,脳卒中死亡率に差異を認めた. (2)白米食の農村では雑穀食の山村に比較してVB2,パントテン酸,コリンなどの不足を認めた. (3)経済復興,白米配給とともに漸次地域差は縮小した. (4)室根村住民の血圧別長期観察により,高血圧群に脳,心ともに死亡率が高率なることを認めた. (5)浄法寺町40才以上の住民の高血圧を主とした健康管理の長期追跡により,死亡率と発症率に明らかなる変化を認め延命効果が得られた. (6)高血圧,糖尿病,高脂血症の危険因子を追求して,これら因子の複合している場合のリスクが高率となることを明らかにした. (7)岩手県全域と全国統計とについて最近30年間の比較により脳卒中死亡率が上位に,心死および悪性新生物はそれぞれ中位,下位にあることを確かめた. (8)栄養調査を行なつた30年前と現在との比較によつて三地域とも食塩量は減少傾向にあるが,脂肪,蛋白量はともに増加を認めた. (9)県民を背景とする当科の入院患者の統計分析により脳出血減少,脳硬塞増加,心筋硬塞増加の傾向が明らかに認められた.これは全県下最近10年間の統計と全く一致した結果であつた. (10)脳卒中,心筋硬塞患者の死亡の危験因子として高血圧を入院愚者について分析してその合併率を再確認した.

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