日本内科学会雑誌
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Myotonic dystrophyとの関連で興味がもたれた家族性慢性甲状腺炎の1家系
星山 眞理中島 寛荒井 奥弘湯浅 龍彦白川 健一
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1980 年 69 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

内分泌機能異常に神経・筋症状が合併することはしばし認められるが,原因は未解明である.著者らは, myotonic dystrophy (MD)と共通点を多く認める家族性慢性甲状腺炎の4同胞例を経験したので報告する.症例1 (38才,女)および症例2 (46才,女):慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下症と上腕二頭筋にmounding現象を認めた.乾燥甲状腺末投与後,粘液水腫と筋症状の改善を認めた.症例3 (33才,男):慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下なし.下肢遠位筋に筋萎縮,インポテンツと睾丸萎縮を認めた.症例4 (40才,女):甲状腺機能正常,筋症状なし.以上の所見に加えてほぼ全例に,低身長,知能低下,若年性白内障,交代性眼振,前頭部脱毛とHLA検索でBW-35を認めた.慢性甲状腺炎のみでは,これら多彩な神経内分泌症状が説明しきれないことより,若年発症型甲状腺機能低下症の潜行状態または臨床的に筋萎縮,筋緊張,知能低下,前頭部脱毛,白内障,多腺性内分泌障害,家族内発生をすることが知られているMDとの鑑別が重要と考えられる.若年型発症甲状腺機能低下症のeuthyroidの段階でこのような多彩な症状の報告はない.筋電図,筋生検所見からMDと鑑別されたが,他の多彩な症状は, Trediaらも強調したようにMDとの共通性に注目すべきと思われる.

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