日本内科学会雑誌
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血漿カテコールアミン濃度からみた各種高血圧疾患の交感神経機能について
佐久間 久一三浦 幸雄安達 真樹富岡 洋小林 清吉永 馨
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1980 年 69 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

1)血漿カテコールアミン(CA)濃度は多くの因子によつて影響を受けるが,一定の条件設定によつて再現性のある安定した値が得られた.正常対照者における血漿ノルエピネフリン(NE)濃度は加令とともに漸増傾向を示したが, 20才台から40才台の各年代間では推計学的に有意な差は認められなかつた. 2) 20才から49才までの各種高血圧患者において,安静時の血漿NE濃度は,褐色細胞腫例で著増し,悪性高血圧例の全例,慢性腎不全例の36%,良性本態性高血圧例の35%,腎血管性高血圧例の20%の症例で正常上限以上の高値を示した.一方,原発性および特発性アルドステロン症(PA+IHA)例の血漿NE濃度は正常範囲内の値を示した. 3)正常対照,良性本態性高血圧,腎血管性高血圧群における立位時の血漿NE濃度は,安静時の血漿NE濃度と比較し, 130~150%程度の増加率を示し,各群間では差を認めなかつた.一方, PA+IHAでは,その増加率は224%と他の群に比べ過大な反応が認められた.以上のように,血漿CA濃度を指標として各種高血圧疾患の交感神経機能をみた場合,疾患別特異性が認められ,いずれの高血圧群においても抑制傾向はなく,むしろ上昇傾向にあることが示唆された.しかし,同一疾患の患者群でも血漿CA濃度の分布は輻広く,交感神経系の病態生理学的意義は,各疾患における病型や重症度および合併症の有無などによつて一様ではないと考えられた.

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