日本内科学会雑誌
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糖尿病を伴つた原発性肺胞低換気症候群の1例
山本 英樹三輪 梅夫坂戸 俊一森 清男長谷田 祐一吉野 公明佐藤 隆小野江 為久河村 洋一大家 他喜雄木下 弥栄
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1980 年 69 巻 1 号 p. 40-44

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抄録

肺・胸郭系に異常がなく,呼吸中枢の感受性が低下したために低換気をきたす原発性肺胞低換気症候群は, 1955年Rattoらにより記載され, 1974年Sollidayらにより中枢神経疾患あるいはその既往歴があるものをcentral alveolar hypoventilationとし,原因不明のものを原発姓肺胞低換気症候群に分類されており,チアノーゼ,意識障害,多血症,頭痛,呼吸困難,肺高血圧症,うつ血性心不全などを主要症状とし,血液ガス分析上高炭酸ガス血症,低酸素血症を示す.本症の報告例は少なく,本邦では西島らの1例,横山らの1例の計2例にすぎない.我々は脳炎,中枢神経疾患の既往を認めない55才の女性で,糖尿病,慢性肝炎の精査のため入院し,血液ガス所見から本症を疑い呼吸機能検査,炭酸ガス負荷試験により診断を確定した本症の1例を経験した.入院時自覚症状は口渇,全身倦怠感,頭重感のみでチアノーゼ,浮腫,意識障害,呼吸困難などの症状を示さず,血液ガス分析でpH 7.32, PaO2 70.3mmHg, PaCO2 66.6mmHgと著明な高炭酸ガス血症を示していた.呼吸機能検査成績は努力肺活量, 1秒率,最大換気量,拡散能のいずれも正常範囲内であつた. 3分間の過換気によりPaCO2は51.7mmHgから28.3mmHgへと著明に低下し, PaO2は74.3mmHgから108.4mmHgへと上昇し,血液ガス異常が換気機能障害に起因しないことが証明され, 5%炭酸ガス吸入に対する換気応答を欠くことから原発性肺胞低換気症候群と診断された.

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