日本内科学会雑誌
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色素沈着,剛毛,浮腫,多発神経炎を伴つたIgA (λ型)骨髄腫の1剖検例
皮膚,末梢神経のcongo-red陽性物質について
岩本 奈津塚田 直敬井上 憲昭小口 喜三夫柳沢 信夫塚越 広
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1980 年 69 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

37才の女性で色素沈着,剛毛,浮腫,多発神経炎を伴つたIgA (λ型)骨髄腫の1例を経験した.本例はprednisoloneとcyclophosphamideの治療により-時症状の軽快をみたが,再燃をくり返し,約2年の経過で死亡した.生検および剖検材料の皮膚と末梢神経組織でIgA, β1Cの共存したcon-go-red陽性の沈着物質を認め,さらに剖検で骨髄腫を確認した.本例のように多彩な症状をもつた症候群では,形質細胞腫の治療により,皮膚,神経症状を始めとするさまざまな症状の軽快が認められることから,免疫グロブリン異常と本症候群の関連が注目されてきた.今回認められた沈着物質は免疫グロブリンと補体をもつことから, immune complexの可能性も考えられたが,沈着部位の炎症所見に乏しく, immune complexというには問題が多い.免疫グロブリンと補体が共存し, congo-red陽性であるという組織化学的性状からはamyloidに近い物質と考えたが,電子顕微鏡的にarnyloid fibrilは確認できず,この沈着物質についての明確な結論は得られなかつた.本症候群においてcongo-red陽性の沈着物質は認められておらず,我々が認めた沈着物質は本例の成因を考える上で興味ある所見である.また骨髄(Th11)は組織学的に典型的な骨髄細胞のcell clusterを作つているが,むしろその浸潤は孤立性に近い点が特徴的であつた.

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