日本内科学会雑誌
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血圧,心電図,血中カテコールアミンが周期的変動を示した発作型褐色細胞腫の1例
梅村 敏塩之入 洋小林 公也瀬底 正司栃久保 修日隈 菊比児博 定金子 好宏
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1980 年 69 巻 1 号 p. 52-58

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抄録

血圧,心電図所見,血中catecholamine (CA)が周期的変動を示した発作型褐色細胞腫の1例を報告する.症例は発作型高血圧を主訴とした48才,男.発作の血圧上昇時(BP 250/150)には頭痛・悪心・胸痛を伴い,血中norepinephrine (NE) 5770pg/ml (非発作時475), epinephrine (E) 16170pg/ml (非発作時310)に上昇,血圧下降時(BP l00/50)には症状改善し,血中NE 1900pg/ml, E 5460pg/mlに低下し,血圧値と血中CAは約15分周期で平行する変動を認めた.血圧上昇時には血漿renin活性6.75ng/ml/h,血漿aldosterone 20ng/dl,血漿cortisol 19.5μg/dlで,いずれも高値であつた.血圧変動にほぼ一致して心電図上ST-T,脈拍の周期的変動を認めた.なお尿中CAも高値で,後腹膜気体造影断層法で右副腎部に直径3.0cmの腫瘤陰影を認め,右副腎静脈造影でもほぼ同大の静脈圧排像を認めた.さらに右副腎静脈血中CAも高値を示し,右褐色細胞腫と診断.手術により12gの比較的小さい腫瘍を含む右副腎を摘出した.電顕組織学的にA cell優位の褐色細胞腫であり,腫瘍内CAもNE 0.37mg/g wet tissue, E 1.35mg/g wet tissueとE濃度がより高値であつた.以上,本症例では,発作時,腫瘍からのCA分泌が周期的に変化し,血圧,心電図所見もこれに平行して周期的に変動したが,その詳細な機序は明らかでない.現在までに報告された周期的血圧変動を示したCA分泌腫瘍9例についても,文献的に考察を加えて報告した.

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