日本内科学会雑誌
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両側後大脳動脈閉塞症により皮質盲をきたした本態性血小坂増加症の1例
塩 宏植木 壽一
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1980 年 69 巻 6 号 p. 745-750

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抄録

本態性血小板増加症は希な疾患であるが,脳血管障害を合併することが知られている.両側後大脳動脈閉塞により,皮質盲をきたした本態性血小板増加症の1例を経験したので報告する.患者は74才,女性.突然意識消失,左不全片麻痺,失明が出現し,精査のため入院となる.見当識障害,計算力低下あり.左同名半盲.左下肢深部腱反射やや充進し, Babinski徴候陽性,知覚障害あり.赤血球数507~608×104/cmm,血色素量14.6~17.3g/dl,血小板数76.2~165.6×104/cmmで大小不同がある.白血球数は9900~14100/cmmと軽度増加.骨髄所見で巨核球数の増加と血小板の巨大な集塊がみられる.好中球アルカリフォスファターゼ活性陽性指数の高値, LDH高値, pseudohyperkalemiaがあつた.血小板凝集能はADP, collagenに対し著明な低下を示し, epinephrine凝集能は反応が認められなかつた.脳CTスキャンで両側後頭葉領域にlow density area(右側>左側)が認められ,脳血管撮影にて右側後大脳動脈の完全閉塞と左側後大脳動脈の一部閉塞が認められた.左不全片麻痺は徐々に改善したが,左同名半盲から皮質盲を呈し,盲目を否定するAnton症候群もみられ,会話も作話傾向となり,精神的に不安定な状態がつづいた.

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