日本内科学会雑誌
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超音波パルス・ドプラ法による肺動脈血流の分析
岡本 光師宮武 邦夫木下 直和榊原 博仁村 泰治
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1981 年 70 巻 3 号 p. 376-384

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抄録

健常者10名,各種心疾患38例において,超音波パルス・ドプラ血流計と断層心エコー図装置の複合的応用により,右室流出路より肺動脈基部にかけての血流計測を行なつた.断層心エユー法によりサンプル部位を確認しつつ血流ドプラ記録を行ない,次の結論を得た. 1)健常老の肺動脈弁口ないし肺動脈基部での駆出血流パターンは,収縮中期で最も速い,ドーム型のパターソを示す.各瞬間においては殆ど均一に近い速度成分で流れる. 2)肺高血圧例では,弁口付近の駆出血流速度は収縮早期にすでに減速し始める。そのため,血流パターンのピーク速度は収縮早期にある.この異常は,肺動脈血圧,特に全肺血管抵抗に密接に関係している. 3)肺高血圧例では,肺動脈基部の後半分の領域で紋縮後期に逆方向の流れが記録される.これは,この領域における渦などの血流の乱れによるものであろう, 4)肺高血圧例における肺動脈弁後尖の特徴あるエコー・パターンは,血流状況とよく対応している, 5)肺動脈弁領域の収縮期血流パターンの上記の所見は,肺高血圧の非観血的分析に有用である. 6)特発性肺動脈拡張症の1例についても検討を行なつた,血流パターンは,一見肺高血圧例のそれに似ていた. 7)肺動脈弁領域の収縮期血流パターンは,一般に肺動脈圧だけでなく,局所の形態的変化にも基づく.

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