日本内科学会雑誌
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β遮断薬pindolol投与患者にみられた血清creatine phosphokinase活性の上昇
今鷹 耕二関 顕高橋 伸夫藤井 潤大内 尉義桑子 賢司梅田 徹町井 潔長谷川 敏子尾添 章子
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1981 年 70 巻 4 号 p. 580-585

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抄録

我々は最近,高血圧治療としてβ遮断薬の一種pindololを投与中の患者で,血清creatine phosphokinase (CPK)が異常高値を示すもののあることに気付いた.本稿では典型例の呈示とともに, pindololの血清CPK上昇に及ぼす効果を確認する目的でpindolol投与中の患者の血清CPK値を調査したので報告する.症例は61才,男性. pindolol投与前の血清CPK 86IU/lに対し, 30mg/日6カ月投与後に390IU/lを示した(正常<118IU/1).その後5カ月間高値を持続したが, pindolo1をpropranololに切換えたところ2週間で正常に復した. pindolol 15mg/日再投与では血清CPKは271IU/lに再上昇した.この間狭心痛や筋肉痛はなく, GOT, GPTにも大きな変動は認めなかつた.次に, pindolol投与中の患者の調査では,血清CPKが投与前値より40IU/l以上上昇するものは,朝日生命成人病研究所では34例中13例(38%),三井記念病院では47例中16例(34%)であつた.これに対し, propranolol投与例では14例中1例もなかつた.また, pindolol投与中の血清CPKが120IU/l以上であつたものは朝日生命成人病研究所では56例中19例(34%),三井記念病院では115例中15例(13%)であり, propranolol投与中の64例中2例(3%)に比べて明らかに多数であつた.これらの結果より, pindololには血清CPKを上昇させる作用のあることが強く疑われた.その機序は不明であるが, pindololの内因性交感神経刺激作用が血清CPKの上昇に関連している可能性も考えられる.

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