日本内科学会雑誌
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虚血性心疾患の成因に関する臨床的研究-脂質代謝と冠状動脈硬化度の相関性について-
脇屋 義彦
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1981 年 70 巻 5 号 p. 714-726

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抄録

本研究は選択的冠状動脈造影法による冠状動脈病変の重症度と,高比重リポ蛋白コレステロールを中心とする血清脂質とを対比し,その臨床的意義について検討を加える事を目的としたものである.血清脂質の測定は野間らによるヘパリンCa2+法を用いたが,本法に関する方法論的な検討,すなわち再現性,簡便性,各種測定法との相関についての検討を行ない良好な結果を得た.健康成人47名,冠状動脈疾患群72名,その他の心疾患群23名の計142名の成人男子の血清脂質を測定し, 95名の心疾患々者にはあわせて冠状動脈造影を施行し,病変の重症度をcoronary scoreとして定量的にあらわし,両者を対比し検討した.その結果,冠状動脈疾患群は他の2群と比して明らかに高比重リポ蛋白コレステロールは低値であつたが,総コレステロール,中性脂肪,諸リポ蛋白コレステロール値単独ではcoronary scoreとの間に統計的に有意な相関は見出せなかつた.しかし高比重リポ蛋白コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロールとの対比では, Y=-3.4X+18.1, r=0.66 (P<0.001)で良好な負の相関々係を示し,特にその比が2.5以下の例は全例がcoronary score 5点以上の重症冠状動脈病変を有していた.このように高比重リポ蛋白コレステロール値と低比重リポ蛋白コレステロール値の比は虚血性心疾患の発生,進展を考えるうえで,一つの重要な位置を占めていることが明らかとなつた.

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