自己免疫反応陽性を示した慢性活動性肝炎の男性例を経験した.症例は, 46才,男. 1978年5月より,慢性肝炎の診断で,近医で治療をうけていたが,同年10月初め,微熱,全身倦怠,腹都膨満など,症状の進行を認めたため,私どもに紹介された.入院時,他覚的に,肝腫大と腹水を認めた.入院後の検査で,血液凝固系ではヘパプラスチンテスト38%,活性部分トロンボプラスチン時間64.1秒.生化学的には,総ビリルビン5.7mg/dl, GOT 103IU/
l, GPT 106IU/
l,蛋白分画ではγグロブリン3.4g/dl.免疫学的には, RAテストは陰性であつたが, LE細胞現象・LEテスト・抗核抗体・直接クームステストが陽性で, IgGは3022mg/dlと高値を示した. HBs抗原は陰性, HBs抗体は陽性であつた. AFP陰性.肝は組織学的に,著明な肝細胞壊死とリンパ球様細胞を主とする単核細胞の浸潤ならびに結合織の増殖により,〓肝小葉は不整形となり,境界は明瞭でなく,慢性活動性肝炎の像を呈した.上記所見より,自己免疫反応陽性の慢性活動性肝炎と診断し,副腎皮質ステロイド薬を投与したところ,治療開始後,すみやかに著明な臨床症状ならびに検査所見の改善が認められた.わが国では,自己免疫反応陽性を示す慢性活動性肝炎の男性例は比較的希であると思われるので,文献的考察を加えて報告した.
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