日本内科学会雑誌
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血液幹細胞の臨床
高久 史麿
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1981 年 70 巻 7 号 p. 959-974

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抄録

血液細胞の分化特に造血幹細胞に関する研究は近年著しい進歩をとげ,その知識は各種血液疾患の病態の理解の上で次第に不可欠なものになつてきている.本文においては造血幹細胞の分化の基礎的な問題について簡単に紹介すると同時に,この細胞の有している病態生理学的並びに臨床的意義に関して概説を加えた.なお本文の記載にさいしては幹細胞に関する臨床的な研究をひろくとりあげ,現在迄に発表されたこの問題に関する多くの研究者の成果を紹介すると共に,その中に著者らのグループが従来から行なつてきた幹細胞についての臨床的な研究の結果を随時とりいれた.赤血球系細胞の異常では,再生不良性貧血を中心とする骨髄の低形成による貧血症,或いは真性多血症の様な赤血球産生の増加の機序に造血幹細胞の異常が密接に関与している事が明らかになつている.一方,顆粒球系細胞においても白血病が造血幹細胞のレベルの異常である事が様々な研究の結果明らかになつた.さらに従来前白血病状態とよんでいる各種血液疾患においても,幹細胞に質的或いは量的な異常が存在し,その異常が以後の白血病の進展に密接に関連する事が明らかになつている.造血幹細胞は,各種血液疾患の病態生理に深い関連を有しており,その意味では幹細胞異常と呼ぼれるべき一群の疾患群があると考えられる.幹細胞は又再生不良性貧血に対するアンドロゲン療法,或いは再生不良性貧血や白血病に対する骨髄移植に理論的な根拠を与えるものである.

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